2020年12月20日、静岡きょうだい会代表の沖 侑香里さんをお招きして、オンライン会議システムZOOMを用いて、きょうだい支援のセミナー「きょうだいってなあに?」を開催しました。
当日の参加者は全国各地から40名が参加しました。
講師としてお招きしたのは、5歳年下の進行性難病の妹がいたという沖 侑香里さん。
講演の中で大切だと感じたのは、「きょうだい」と親との違い・・・つまり障害のある家族と出会うタイミング(それまでの人生経験の差が大きい)を理解することです。
きょうだいは、
①子どもの時から当たり前にある環境の中で「助けを求めていい」という感情を抱きにくい
②「親は半生、きょうだいは一生」・・・親の考えるこの先と、きょうだいが経験するこの先のスパンに違いがあり、親亡き後の対応が必要になる
「きょうだい」は、人生の節目ごとに悩み、成長過程でその悩みや課題が変化しながら一生続いていくのです。
沖さん自身が経験した「きょうだい」の気持ちを整理してみます。
●幼少期から小学校低学年:
親に甘えられない寂しさ
何をするにも妹中心で我慢が当たり前
「私は小さいお母さん」で、親を困らせたくないという感情が根強い
●小学校高学年~中学生:
他の友達と一緒のレールに乗って話が出来ない
友人に家族の話をしにくい
周囲の障害に対する偏見
妹と一緒に外出したくないなど
他にも「きょうだい」のいる家庭によって様々な気持ちが発生します。
※兄・姉に障害があるケースでは、「障害の兄よりも自分の方ができることが増えていったときの戸惑い」、「姉と同じように自分も病気になり動けなくなるのではという不安」など。
さらに、「家族が障害のある兄弟姉妹のことを説明してくれない」、「家族が頼ってくれないことで寂しさや疎外感を感じている」、「障害のある兄弟姉妹の状況を説明できず、周囲に正しい理解をされないから話したくない」など。
もう一つ大切だと感じたポイント、きょうだいの負担になりやすい言葉を知っておくこと。
例えば、「妹さんの面倒見て偉いね」「妹さんの分まで頑張って」「お母さんを助けてあげてね」「しっかりしたお姉ちゃんがいて将来安心ね」という言葉はプレッシャーになったそうなので、注意が必要です。
高校生からは、友達同士で家族の話題が減っていき、同時に受け止めてくれる友人も見つけられて少し救われていた時期だったとのことで、小学生~中学生までの物理的な支援は特に考えていく必要があります。
逆に、内面では大学進学をどうするか、恋愛・結婚やキャリア設計など、将来への不安が高校生以降は顕在化してきたという話なので、精神面での支援・相談できる場所というのが必要になります。
大学で一人暮らしを始めると、妹のちょっとしたことへの対応がなくなり24時間すべてが自分の時間だということにも戸惑い、自分だけが幸せになっていいのかという葛藤が生じたとのこと。大学時代に「きょうだい」という概念に出会い、自分の今まで色々と悩んでいた原因がはっきりしたとのことです。
その後、お母さんが急に亡くなり、社会人3年目で親亡きあとの妹の保護者となり、妹も看取ることになったとのことで、そのご自身の経験からとても大切なことを教えてくれました。それは、「きょうだい」が親亡きあとの面倒をみるみないに関わらず、保護者の方に知っていただきたい内容でした。
①障害のある子どもの情報を自分の頭の中だけでなく何かしら文字に起こす
②福祉とパイプを繋ぐことが障害のある子ども本人にも支えになる
③「きょうだい」の子どもの気持ちに寄り添うこと(一度でも二度でも)
振り返ってみると、ヤングケアラーとして関わっていた沖さんにとって、直接的なケアをすることよりも妹との関わり方や心情的な部分の方が辛く、この気持ちを当時誰かに聴いて貰えていたらもう少し楽だったのではないかと感じているそうです。
まだまだ足りない「きょうだい」への支援。
コロナ過の中で活動もままならない状況ですが、NAOのたまごの活動の中から広がったサークル「秋田大学SSA~きょうだいの時間~」とのパイプも繋ぎ続け、関係性で専門性をこえることを目指していきたいです。
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