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Writer's picture佐々百合子

世界一しあわせな国の教育のおはなし

Updated: Mar 27, 2022


2021年1月31日、mormormorのピーダーセン海老原さやか氏、宮腰ムンクイエンセン花絵氏、タンブル有田妙氏をお招きして、オンライン会議システムZOOMを用いて、子育て支援セミナー「世界一しあわせな国の教育のおはなし」を開催しました。mormormor(モアモアモア)とは、デンマークの教育現場で働く3人の日本人女性ユニットです。

mor(モア)はデンマーク語で「お母さん」といいう意味。3人のお母さんが集まって、mormormorとして2014年に結成し、日本各地で、お話し会を実施しています。


お1人目の講師はピーダーセン海老原さやか氏。

「キーワードは『選ぶ・決める』」と題して、天然資源のないデンマークでは、国民が大切な資源と考えられており、個人に関することも社会に関することも「選ぶこと・決めること」がとても大切にされているということで、「1.選ぶ・決める=人生に影響を与える」 「2.選ぶ・決めるをサポート」「3.選べる環境作り」「4.みんなで選ぶ・決める」「5.選ぶを尊重」「6.大人になる。自分で決める」「7.みんなで選ぶ選挙」という7つの「選ぶ・決める」についてお話くださいました。


お2人目の講師は宮腰ムンクイエンセン花絵氏。

叔父さんや従妹が秋田県秋田市に在住しているとのことで、秋田にもゆかりのある講師の方です。

社会生活指導員ペダゴーという資格を持って保育園でお仕事されており、「レッジョエミリアを導入する保育現場から~自分を生きる子どもたち」についての話をしてくださいました。子どもたちの活動をiPADやメモしたりして、保護者・ペタゴー・子どもたち自身が作品だけでなく、活動の過程でどんな言葉を発し、どんな展開があったかなどが分かるようにと記録されている詳細なドキュメンテーション(活動記録)を作成されていることがとても印象的でした。


3人目の講師はタンブル有田妙氏。

「しあわせを感じる力、育てよう」というテーマでお話くださいました。

デンマークは幸福な国ランキングで常に上位にランクインしており、その様々な調査項目の中でデンマーク人は自分たちの生活に満足を感じている人が多いという点に注目したということです。というのも、そこがまさに日本が低評価の部分。物理的な面では高評価だけれど、精神的な面では信頼や寛容さの部分が低く、幸福を感じている人が少ないというちょっと悲しくなる結果が出ています。

たくさんの国民が幸せを感じていることでしあわせな国になるのだとしたら、幸せを感じる力はどうやって身に着けていけばいいのか? そこで幸せを感じている力を構成している要素の中で大事だと考えている3つの力「つながる力」「自分を愛する力」「感動する力」という3つのテーマについて、色々な視点からお話くださいました。

講演に続いて休憩後に気づきのシェア座談会となりました。

ファシリテーターとして森本 佑紀氏(探究型通信教育タンキュークエスト Founder)、佐々百合子(NAOのたまご代表理事)が加わり、3名の講師とチャットに挙げてもらったコメントをもとにフリートークが展開されました。長くなりますが、その中のいくつかをご紹介します。ご興味ある方はどうぞ~。


Q.発達障害のあるお子どもが他の子どもの言葉や行動に対して怒りを抑えられないことがある。デンマークではどうやってほかの子どもを暴力から守り、本人が居心地よく過ごし、最大の力を引き出す環境をつくるのか?」という質問に対し、自分の気持ちに正直にというところと他人の尊厳を脅かさないことを実際の現場ではどう対応しているのか?

A. 一人対応や癒しグッズを用意している。デンマークでもインクルージョン教育というのが何年か前に言われて、発達障害のある子も普通の教室に入れるという風になったが、なんでも一緒にやってみてうまくいかなかったこともたくさんあり、その子たちの特性に合った環境を作ってあげるのが大事だと考えられている。

本人にできること:人との付き合い方を学ぶための「ソーシャルストーリー」を使い、体験からではなくパターンとして学ばせることもある。

また、自分でここにいたらまずいと思ったら休憩したいといえるように、心地の良い椅子やストレスボールを置いている。

周りの大人ができることとして、どうして、いつ、どういう風にその問題が起こるのかを観察して、共有して、3歩先を読んでその子が問題を起こさなくて済むようにすることを考えている。観察して共通理解をしておくと避けられることがあるかもしれない。

また、エクストラの先生がついて、その子のことを観察して休憩が必要だと思ったら別の場所に動かしたり他の子との調整役をしたりする。

とても大変であれば一人でいる時間を基本にして、一緒にいる時間をちょっとずつ増やす。

周りの子どもに対応すること:親の了解が得られれば、その子が持っているチャレンジなどを他の子に話をして、こういうことをすると嫌になる、暴れてしまったら他の教室に行くなどを伝えて、その子一人ではなく周りにいる大人も子どももどうするか、みんなが心地よくいられるかを考える。

問題はその子ではなくその周りやそうなっていく過程だったりするので、その子に問題があるというのではなく、その周りがどうやって変わればいいかを考える。


Q.デンマークでは虐待やDVの件数は少ないのか? 社会問題となっていないのか?

A.件数の多い少ないはわからないが、もちろんある。デンマークでは、そういう方が逃げてくる受け入れセンターがある。場所を移さなければいけないという状況ではなくても、そういう話を聞いてくれるヘルプセンターがある。日本ではNPOやNGOでやっているところがあるが、デンマークは行政として行っている。

コロナのロックダウンで子どもへの虐待の問題も出てきている。子どもたちがみるメディア(有名なユーチューバーの若いお兄さんなど)子どもに通じるチャンネルで話す。でここに電話してくださいというのを流している。子どもたちは新聞やテレビはあまり見ない。

親に養育能力がないと判断したら、生まれる前から準備して調整し生まれた時から預けるように、虐待の芽を持たないように、早く早く対応している。


Q.デンマークは桃源郷・・・みたいなところがあるが、敢えてここはちょっとなぁ・・・というところを言うと。

A. 働いていてゆるい・・・がんばれという感じじゃないが、自由、個人主義になりすぎて、日本みたいなしつけが必要なんじゃないかと思うことがある。運動会がない、整列できない、列に並ばない、そもそも並べないと思う。どっちがいい悪いではないけれど、それぞれの文化の背景がある。

日本は小学校から掃除をする。自分たちが使ったものや場所への感謝の気持ちをもって整理整頓していく。それは素敵だと思う。でも気を付けてほしいのは、「なんで掃除をしているのか?」ということ。決まりだからとまとめてしまわずに、「今自分たちがやっていることにどういう意味があるのか?」と深めていったときに、「無くてもよかった」とか「違う方法でもよかった」などの気づきが出てくる。意味が分かることで新しい道が出てきて、同じ意識をもって違うやり方をしたり、同じ意識をもってやらない選択をしたりもできる。気づきが大切で、いい悪いではない。


Q.保育園で子どもたちが活動に参加したくないときに「じゃあ、あなたはなにしたいの?」と聞くと答えられない子が多い。小さな時からみんなと違うことをしていると、今何をするとき?と聞かれ続けてきたためなのか。自分で選択し決めたことに責任を持つということを子どもたちに伝えることに難しさを感じている。

A.「あなたは何をしたい? 何してもいいのよ。」というフリープレイ(好きなことを自由にしていいよ)をいいこととは思っていない。自由遊び時間というふうにプログラムを組んではいない。なるべく選択肢を与えて、「あなたの番だけれど、このまま続けるか、今日のプログラムをやるか、どちらにする?」と聞く。

子どもの成長段階にもよる。2つの選択肢から選べる段階、10個も20個もある中から選べる段階、たくさんの経験があって選択肢がなくても選べる段階など、いま、子どもがどんな段階なのかを見極めることも大切。


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